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2019.01.05

両眼性複視の原因


 

両眼で見た時に2重に見える複視は、眼球自体に異常があるのではありません。
眼球には6つの筋肉(眼筋)が付いていて、脳からの信号が脳神経を通って眼筋に伝わることによって、眼球をあらゆる方向に動かすことができます。

しかし、①脳神経、②眼筋、③脳神経と眼筋の接続部のいずれかに異常が生じると、左右の眼の位置がずれたり、両眼の動きのバランスがくずれて、別々の像を映すことになりますので、両眼で見た時に2重に見えます。

例えば、眼球の位置が横にずれていれば、左右に同じ像が2つ見えますし、眼球の位置が縦にずれていれば、上下に同じ像が2つ見えます。

 

眼筋麻痺の原因によっては、まぶたが下がってきて眼が開きにくくなったり、視力が低下したり、視野が欠けたり、眼の奥や頭が痛くなったり、ふらふらして歩きにくくなったり、手足がしびれたりすることがあります。
眼筋麻痺以外にどのような症状があるかによって、病変の場所を突き止めるための重要な手がかりになります。特に頭痛や眼球周囲の痛みがあれば、緊急で頭部の断層写真であるMRIを施行する必要があります。

 

① 脳神経の異常によるもの

 

脳出血・脳梗塞・多発性硬化症などの脳幹の障害、腫瘍・脳動脈瘤による脳神経への圧迫、炎症・外傷による脳神経の障害、脳神経の血流障害など、多くの原因があります。

神経が脳の中枢から眼筋まで到達する間の、どの部分で異常があるのかは、診察によってある程度推測することはできます。

頻度は10〜20%と低いものの、脳腫瘍や脳動脈瘤などの重大な病気が隠れていることがありますので、頭部の断層撮像検査であるMRIを受けていただきます。

脳神経の血流障害とは、神経を栄養する微細な血流が途絶えることであり、原因全体の半数近くを占めています。背景には糖尿病や高血圧症や動脈硬化の関与が指摘されています。

血流障害による複視は自然治癒することが多く、発症3ヶ月後に6割、6ヶ月後には9割が完全回復します。
一方、脳腫瘍や脳動脈瘤などによる複視は自然回復しにくい傾向があります。

 

② 眼筋の異常

 

甲状腺機能亢進症による甲状腺眼症が代表的です。

起床後すぐに、白目が充血したり、まぶたが腫れたりすることが多く見られます。
目線を上方に向けた時に、上下に2重に見える複視が悪化することが多く、ひどい場合は眼球が突出して“目をひんむいてビックリしたような顔貌”になります。

診断は、血液検査で甲状腺機能や自己抗体を調べ、頭部のCTやMRIで眼筋が腫れていないか調べます。

 

③ 脳神経と眼筋の接続部の異常

 

重症筋無力症が代表的です。
起床後は症状が軽く、長時間の読書や運転など、疲れたときに複視が悪化します。
神経の刺激がうまく筋肉に届かないため、疲れやすさや眼瞼下垂などをきたします.
頭部MRI検査では異常がでません。
血液検査で自己抗体を調べたり、テンシロンという薬剤を注射して症状が改善されるかで診断します。