お知らせ & コラム News & Column

2018.09.16

赤ちゃんの涙があふれる時

 

生まれて間もなくから目が潤んで目やにが出る場合、先天鼻涙管閉塞の可能性があります。

 

先天鼻涙管閉塞は、目から鼻の中へ排水される涙の通り道(鼻涙管)が、生まれつき塞がっている状態をいいます。

涙の排水管が詰まっているわけですから、涙が目からあふれ、細菌が増殖すると目やにが出ます。

 

先天鼻涙管閉塞は、新生児の約6~20%に見られます。

自然治癒傾向が非常に強く、1才までに約90-95%が自然に治りますので、ほとんどの症例では手術が必要ありません。

 

抗菌の目薬を使うと一時的に目やにが減りますが、止めると目やにが増える傾向があります。

抗菌の目薬は、使い続けると薬が効かない耐性菌が出てきて治療が難しくなりますので、目やにが強いときのみ、長くても2週間以内の使用に留めてください。

 

まぶたに涙や目やにが付着したままにしておくと、まぶたが赤く腫れる原因になりますので、こまめに拭き取るようにしましょう。

 

手術治療の考え方は様々です。

 

自然に治らない場合は、針金のようなブジーで手術治療します。

目頭にある涙の排水口の穴からブジーを挿入して、鼻涙管の詰まっている部分を突き破ります。

最適な治療の時期については意見が分かれており、個々の病状に応じて治療時期の決定を行います。

 

1才までに大多数(約90-95%)は自然治癒することから、当院では基本的には1才まで手術しないで待つという方針をとっています。

ただし、涙囊炎や眼瞼炎を起こしている場合は、早めにブジーを行います。

 

生後6ヶ月~1才頃までであれば点眼麻酔をして押さえつけて行いますが、お子様の力が強くて安全に行えない場合は、薬で半分眠らせたり、全身麻酔をかけて行う場合もあります。

ブジーが禁忌というわけではなく、体動を抑えられて安全にできるという理由で生後3-6か月に行う施設や、6か月過ぎてから行うという施設もあり、考え方は様々です。

 

ブジーを行うデメリットは、ブジーによって一時的に流涙が改善しても、再度閉塞して、複数回の治療が必要になることがあることです。

手術は通常モニター画面などで確認しながら行い記録もされますが、ブジーは術者の手の感覚を頼りに行うため、正確に行われているのかを確認することができません。

 

赤ちゃんの涙道は非常に弱いため、成功したと思っても本来の涙道とは違うところにブジーで穴を開けてしまった可能性があり、その場合は流涙が再発しやすくなります。

ブジーがうまくいかなかった場合は、涙道が癒着して詰まってしまうことがあり、その後の治療がさらに難しくなります。

 

2、3才になっても治らなければ、全身麻酔をかけて、涙道内視鏡などで閉塞部をモニター画面で確認しながら、より安全にブジーを行うこともできます。

稀ですが、ブジー後数日間は、発熱や重篤な感染症を起こすことがありますので、抗菌薬を内服して慎重に経過観察する必要があります。