当院では、マイオピンによる近視進行を抑える治療を行っています。
マイオピンは、学童期の近視の進行を抑制させることを目的に、0.01%アトロピンを配合させた点眼薬で、2012年にシンガポール国立眼科センターから発表された論文に基づいて開発されました。
シンガポールの研究では、1施設において、シンガポールの学童80人程度で効果が見られたに過ぎませんでした。
そこで、マイオピンが日本人でも効果があるのかを検証するため、日本でも7大学(京都府立医科大学、旭川医科大学、大阪大学、川崎医科大学、慶応大学、筑波大学、日本医科大学)にて臨床研究が行われ、最近、2年間の効果について発表がありました(ATOM-J Study)。
結論を申し上げますと、日本人においても、マイオピンは近視の進行を抑えました。
具体的には、6~12歳の学童を、マイオピン点眼群(84人)とプラセボ点眼群(84人)にランダムに分けて、1日1回点眼し、24カ月後の屈折値と眼軸長の変化を比較しました。
その結果、屈折値変化はそれぞれ-1.26D、-1.48D、眼軸長変化はそれぞれ0.63mm、0.77mmで、マイオピン点眼群には有意な近視抑制効果(P<0.001)を認めました。
この臨床研究の素晴らしいポイントは、結果の信憑性の高さにあります。
1.多施設共同試験であること
日本の7施設からのデータを集めている点で、研究不正が起こりにくく、信憑性が高くなります。
2.ランダム化試験であること
学童を無作為に2群に割り付けている点で、近視が進行しやすい遺伝因子や環境因子が、どちらかの群に偏ることを防いでいます。
3.二重盲検試験であること
処方された点眼薬がマイオピンなのかプラセボ(偽薬)なのか、医師も患者も分からないようにしています。
これは、観察者バイアスやプラセボ効果、研究不正を防ぐ効果があります。